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僕の一番好きなスタジアムがフクアリである理由

サッカー

 

先日千葉と名古屋の取材に行ったのだが、いつだって蘇我に来るとテンションが上がる。横浜市民、東横線沿線に住んでいる自分にとってとてつもなく遠くて心が折れそうになる移動距離なのだけど、あのジェフカラーに染められた駅を見ると普段の生活から離れて「これから非日常のエンターテイメントを体験しに行く」という感じが溢れ出てくる。

単なるサッカーの1試合で何言ってんだと言われそうだけど。

そんな蘇我駅から徒歩10分くらいの場所にあるのがジェフ千葉の本拠地であるフクダ電子アリーナなのだが、実は自分が日本で最も好きなスタジアムがここだ。とはいえ全てのスタジアムに行ったことある訳ではないのだが。 元日に初めて行った吹田も、ユアスタやNACK5も非常に見やすくて良いスタジアムだと思う。ただ、トータルで見てフクアリに勝てるスタジアムは自分の中で現れていない。

「そこまで言うか」と思われるかもしれないが、本当にそうなのだ。駅から近いし屋根付きのサッカー専用スタジアムであり、程よいコンパクトさゆえにサポーターの声援が強くこだまする。そんなフクアリというスタジアムでの体験から得られる満足感と新鮮度は非常に高く、国内でもトップクラスと考えている。

同じ感覚を味わえるスタジアムは他にもあると思うし、立地条件でもそう。それでも自分が「フクアリが1番だ」というのは、”思い出補正”と言うしかない。

 

❏2012年のJ2第21節

自分が初めて蘇我に降り、フクアリの中へ入ったのは忘れもしない2012年6月24日。千葉vs湘南の試合を取材するためだった。余談だが自分が最も好きな日本人サッカー選手は巻誠一郎でありオシム監督のサッカーを間近で見たいという思いは中学生の頃から常に持っており、フクアリに来る動機というのは十分にあった。でも、来なかったのは遠かったからだと思う。純粋に。そんなこともあってその日に取材で初めて踏み入れることになった。だからこそ、期待感はとても大きかった。

「記者席からの景色や席の角度はどうなんだろう?」「千葉に勝てたらデカイな…」というような思いを持っていた中、スタジアムにはキックオフ30分前くらいに着いた。メインの下部の入り口から受付を済ませてエレベーターで3階まで上がる。そこで降りた先にあるドアを開けると記者席があったのだが、そこで目に入ってきた景色と音が生んだ衝撃と感動は一生忘れられない。

その年のJ2は甲府が首位を走っており、同じ勝ち点で2位が千葉、3位が湘南という並びだった。毎試合両チームの結果を気にしつつ、21節目、つまり前半戦の最後に相まみえることになったのだ。この上位陣での直接対決でサポーターの高まりや熱気は詳しく述べる必要はないと思うし、想像に難くないと思う。

とにかく、試合を控えてアップをしている選手たちへサポーターがかける声援の量がとんでもなかった。そして、その音が反響してスタジアムの熱気を最高潮に引き上げていた。重要な一戦を控える選手達を後押しするサポーターの声援にあそこまで衝撃を受けたことは、後にも先にも無いと言える。

それは両チームの当時の状況や対戦のタイミング、そして自分自身が来るのを非常に楽しみにしていたという様々な条件が重なったから生まれた感情でもあると思う。そして、思い出はこれだけではない。

 

試合が最高にエキサイティングだった。


結果としては1対1のドロー。両チームとも勝利して相手に差を付けたかった中、それを成し得ることができなかった。これだけ書くとしょっぱい試合のように思われるのだが、互いにアグレッシブさを全面に出し、戦い、強度の高さがあった。

流れ的には24分に武田英二郎のクロスを藤田祥史が頭で合わせて千葉が先制をするも、42分に湘南が坂本紘司のフィードに反応した高山薫が決めて同点にする。後半開始早々には湘南”らしい”ショートカウンターから馬場賢治がバー直撃のシュートを放ったり、菊池大介が完全にゾーンに入っていてキレキレだったり。千葉は伊藤大介の精度の高いキックで湘南のゴールを脅かし、深井正樹は簡単には捕まらなかった。

 

Youtubeに藤田祥史のゴールがあった

 

両チームが良さを出した文字通りの"死闘"だった。そしてこの試合の残り10分間、記者席で見ていた自分はそれまで手に持っていたペンを置いた。どう転ぶかわからないこの試合を最後まで一瞬も目をそらさずに見ておきたいと思い、1プレー1プレーを必至に追いかけたくなったのだ。一瞬でもノートに目を落としたときに何か大きな出来事がピッチ上では起こる、と感じて。

メモをすることを放棄した試合はその他はあまり思い出せない。この試合だけだったように思う。自分の中で取材した試合のベストバウトはこれかもしれない。それくらい印象的だった。

 

キックオフ前から試合終了に至るこんな一連の流れの中で得られた満足感と衝撃度、興奮はとてつもなかった。今見たらそんな大した試合じゃないのかもしれない。だけど、サッカーというスポーツが提供できうる全てのポジティブな要素が、この日のフクアリには詰まっていた。


「あの日の感覚をもう一回味わいたいし、ここなら味わえるはず」

こういう期待を持って、僕はいつもワクワクしながら蘇我を降りている。

フクアリ2_new

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