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フルメタル・ジャケット(1987年・米)



 ベトナム戦争に向かうために、多くの若者たちが海兵隊に志願をした。しかしそこで待っていたのは「超」をはるかに超える過酷な訓練。まさにそこは「殺人兵器養成学校」であった。肉体の鍛錬に加え、「鬼教官」ハートマンによる罵詈雑言と彼への絶対服従が志願兵たちの精神に支障をきたしていき、一人の劣等生の存在から訓練所の空気は最悪の方向へ向かっていった。そして訓練を終えた若者たちはベトナムへ兵士として赴く。

訓練所とベトナムでの戦場の二部からなる映画。多くの人の声を聞く限り前半のほうが評判がいい。内容うんぬんよりもハートマン軍曹の独裁っぷりがその意見の理由だろう。ここまで汚い言葉を発する人物があらわれる映画は見たことがない。

後半の戦場シーンでは、ベトナム戦争を扱ったものでは珍しくジャングルでの戦闘がない。フエでの市街戦を扱ったものであり、さらに激しい戦闘シーンというものがそこまで多くない。こういった点から思うに、キューブリックは反戦思想や戦場のおぞましさというものを観るものに伝えたかったわけではないのでは、と感じた。

焦点は、戦争という状況が生み出した人間の心情の変化やそういった状況でも変わらない感情、だと思う。前半に出てくる劣等生の変化やいい意味で戦場でも維持される仲間意識、そしてラストには主人公が自らの意思と反した決断を下すシーンがある。

 この点を推したかったのかどうかはわからないが、少なくとも自分はそう思えたた。

同じベトナム戦争を扱ったものでも、ディア・ハンターは「多くの人々の共通した変化」を、そしてこれは「個々の人物の異なる変化」にフォーカスを当てているもので、違いは明確かなと。

前半部分のハートマン軍曹のセリフはほんとうに汚いものばかりなので、家族で見ないほうがいいでしょう(笑)

 

SCORE ⇒ 65点

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