「ヴェルディは僕達の未来です」伝説のスピーチの主・渋谷亮が、ヴェルディに帰還

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よく、そのクラブに強い忠誠心を示す選手を表現する言葉で”◯◯の血が流れている選手”なんて表現が良く使われる。空欄部分に入るのは大抵、そのクラブを象徴する色だ。赤を基調とするユニフォームを来ているクラブはどうしているのだろうか。書いている途中にふと思った。

と、それは置いておき、ちょうど一週間前、J2・東京Vが来季の新戦力として中央大学から渋谷亮を獲得するというリリースを出した。

彼ほど”緑の血が流れる”と形容するにふさわしい選手はいないのではないだろうか。自分はそう、思う。彼について長く取材をし続けてきたわけではないのだが、限られた取材期間の中でも、それを強く感じたものだ。東京Vを追っているライター・海江田哲郎さんのフットボールチャンネルにおける連載企画でもこの選手について触れられているが、そこで紹介されている「僕はヴェルディ以外に興味がないんです」という言葉も、彼に流れている血の色が緑であることの証明の一つと言えるだろう。そして何より、サポーターの中で”伝説”ともなっているであろう名言がある。2010年のクラブユースを制した後に、渋谷が担ったスピーチの中の一節「ヴェルディは、僕達の未来です」というものだ。

この言葉とともに幕を閉じたこの大会に臨んだ東京Vユースの中心は、1992年生まれの選手たち。小林祐希、キローラン兄弟、そして高木善朗らを輩出した、いわゆる黄金世代。今年度のJリーグアウォーズでも最優秀育成クラブ賞を獲得したが、”下部組織の強さ”を象徴する世代とも言えるだろう。そんな、92世代の中に渋谷もいた訳だが、この年代に生まれたからこそ彼の”武器”が確立されたと言っても過言ではない。

とにかく、ボールの近くにいる。彼を表す一言はこれが相応しいのではないだろうか。局面を一発で打開するスルーパスやロングフィードを持っている訳でも、強烈なシュートを持っている訳でも、一歩で相手を置き去りにするスピードを備えているわけでもない。決して目立つプレーヤーではないのだが、豊富な運動量でとにかく良く働いてくれる。その運動量も、例えていうなら湘南ベルマーレやレバークーゼン、ドルトムントの選手たちのような激しいスプリントで前の選手を追い越していくものではなく、何気なく距離を詰める動きを90分間、やり続ける。そんなタイプである。中盤の選手として、”常にボールに関わっていられる”のが彼の最大の特徴であり、武器である。

そして2年ほど前。関東大学サッカーで彼を取材した際「なぜあそこまでサポートの意識を怠らないのか?」と質問したことがある。それに対する答えは、

「強烈な奴らばかりが周りにいたので、自分は気を使えるプレーヤーになろうと思いました」

というもの。今なお鮮明に覚えている。ここで言う”強烈な奴ら”とは言うまでもなく、前述したヴェルディユースの同期の選手たち。確かに、強烈だ。小林祐希1人でもだいぶインパクトは大きい。こういった選手がいる中で、どういうプレーが求められているか、どうすればチームを勝利に導くことができるか。そう考えた結果、辿り着いたのが今のプレースタイルなのだろう。

東京V・Yから進学した中央大学では3年時に頭角を表し、一時はレギュラーとして活躍。だが、最上級学年、そして主将を任されることになった今年度はチームの不振に加えて自身の不調も重なり、出場機会に恵まれなかった。取材をした際に「絶対にヴェルディに戻りたい」迷うこと無くこう言葉にしていた彼のその願いが叶わないのではないだろうか、なんて不安に思ったこともあった。それゆえ、今回の内定発表には安堵の気持ちでいっぱいだった。
Jクラブの下部組織から大学に進学する選手は数多いるのだが、大体はその出身クラブへの愛着を持っているものだが、渋谷ほど”クラブ愛”を全面に出していた選手は思い浮かばない。東京Vは決して経営面で順風満帆に行っているクラブでは無いし、今年度に関してはJ3降格の可能性もあった。かつての栄光が歳を重ねるごとに霞みつつある中でも、渋谷はこのクラブに”戻りたい”と思い、”救いたい”という気持ちを持ち続けた。そしてその願いが叶い、プロとしての第一歩を踏み出したのである。

冒頭に述べた”緑の血が流れている”という点でいうと、現在のチームを率いる冨樫剛一監督も同じだろう。読売の下部組織で育ち、ヴェルディで現役生活を過ごして、ユースの監督、そしてトップの監督まで上り詰めたという稀有な経歴の持ち主だ。東京Vは今年のJリーグアウォーズで最優秀育成クラブ賞を受賞したが、その壇上にて羽生社長は冨樫監督についてこう、言及していた。

「彼は私どものアカデミーで育ち、プロ選手になって引退して、私どものアカデミーのコーチと監督をして、トップの監督になりました。まだ調べていないので何ともいえませんが、もしかしたらこういう経歴の指導者というのはJリーグ史上、初めてなのではと思っています」

“クラブの象徴”が監督として率いるチームに、下部組織から大学を経由して”帰還”を果たしたルーキーが加わる。この2人が相まみえる来シーズンの東京Vに強い期待をしている自分がいるし、間違いなく彼らが”ヴェルディの未来”を託された存在だと思っている。

では、今日はこんなところです。

Leona

主です。詳しくはこちらへ→http://reonatakenaka.com/?page_id=2

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