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吉備国際大学のメンバーに名を連ねた”30歳”の選手 [なでしこ2部 日体大vs吉備国際大charme]

サッカー

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最近、なでしこリーグの取材に行っている。もちろん優先度で言うと フロンターレ>大学サッカー>なでしこ という序列になるので、本当に時間が空いたときに限定されるのではあるが。なぜ行こうと思ったかというと、女子W杯で宮間あや選手が「ブームでなく文化に」と言っていてそれが少しばかり刺さったからというのはある。文化って言葉は簡単だが説明するのは難しい。けど、自分なりに考えた結果”サッカーファンの会話で自然に話題に出てくる”レベルになっていくようにするのがまず取り組むべきことで、そのための情報発信を自分がしていかなければなと。ただ、扱う媒体も特にないので、この場を使って発信していくことにした。

まずなでしこ2部という、サッカーファンの中で見てもマニアックなカテゴリを選んだ理由としては日体大がいるから、の一言に尽きる。初めて女子サッカーを取材したのが2年前のインカレで、この準決勝のカードがものすごく激戦で、心を打たれたので。その当時1年生だった選手が4年生になったということもあったので、取材しがいがあるかなと思い、入り口として選んだ。

余談だが、人生初のなでしこL取材は昨年の日テレ・ベレーザvs伊賀FCくノ一。これは後者の伊賀に、前述したインカレの準決勝で自分の目を引いた杉田亜美がいたからという理由と、エルゴラで湘南担当をしていた時代にお世話になった浅野哲也さんが監督をしていたので。いずれにせよ、きっかけは2012年度のインカレであることは間違いない。

で、この試合は自分が初めて取材したその準決勝と同じカード。舞台とチーム名は異なれど、「大学同士の良きライバル」(吉備国際大・太田監督)であることは間違いなく、いい試合が見られるだろうと期待していた。

↓両チームのスタメン、マッチアップはこんな感じです。PCの方は拡大して御覧ください↓
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青が日体、黄色が吉備です。

試合展開はポゼッション力で勝る日体大に対して、吉備国際大が猛然とハイプレス。特に左サイド、⑥吉武愛美と⑪池尻茉由のところでうまくはめて前へ展開する場面が印象的。中でも吉武はユニバ代表ということもあって、その能力を出せていたかなと。球際での激しい守備のところから攻撃への展開に狙いを持っているようなイメージを持ったが、試合後に話を聞いてみると「(長所は)ロングキックとアグレッシブな守備。なのでボールに関わって関わって、サイドチェンジをしようと。そこは徹してやらなければいけない部分だったので、チャレンジしました」とのこと。良さは見られた。

 25分をすぎたあたりからガクンと吉備の運動量が落ちる。プレスがもたず、狙いとしていた「コンパクトな形」(吉武)にすきまが生まれ、そこを突かれた攻撃を受ける回数が増え、かつ日体大の主将であり10番を背負う櫻井麻由佳が高い位置を取りはじめて攻撃に厚みを加える。吉備にとっては苦しい時間帯だった。後半もその構図がずっと続くが、GKの①藤田涼加のビッグセーブも3度は飛び出し、耐えに耐えた。手元のメモを見ると、67分から吉備のチャンスは全くない。ただ、耐え切って迎えた93分にドラマが生まれる。右SBの⑲呉屋絵理子がボックス内に走りこんだ⑪池尻に絶妙な縦パスを送ると、これがCKを呼びこむ。そして、このCKをファーサイドで④宮地明日翔が頭で合わせ、決勝点を記録。そして、試合終了のホイッスル。試合を通じて押し込み続けた日体大がワンチャンスをものにされて痛い黒星。1試合多く消化している中で2位・ノジマステラとの勝ち点差が5に開いてしまい、ノジマの結果次第では8に広がる苦しい状況に。
(補足:なでしこ2部では2位が入れ替え戦に進める)

この試合のポイントとしてはやはり25分以降に猛攻を受ける側となった吉備の守備陣。この試合のMVPを選ぶのであれば間違いなくGKの①藤田涼加。164cmと決して大柄ではないが、ハイボールに対するキャッチングやシュートストップで存在感を発揮した。ただ本人の一番の武器は「ビルドアップ」だと言う。そこはあまり見られなかった印象なので、次に期待したい。
右SBを務めた呉屋は「後ろが今日は頑張って守れた」ことをこの日の勝因に上げていたが、上記の藤田に加え、もう1人言及したいのがCBの㉗シャナ・ハドソンである。スタメン表を見た時に年齢が”30″とあって「!?」と思ったのだが、その後調べてみたらなんと3日前に入団が決まったばかりで、ハイチ代表かつアメリカU-17代表の経験もあるプロ契約選手だったのだ。

ハイチ代表ハドソン 吉備国大入団 23日の日体大F戦でデビューか

思うに、女子は男子以上に身体能力の差が如実に現れる。この日の日体大の1年生FW佐藤美月も高さがあってドリブルでも仕掛けることができる”強さ”があるタイプなのだが、ハドソンとの1対1は果敢に挑むもほぼストップされていた。空中戦の強さも際立っており、耐久力あある”ザ・センターバック”という感じの選手だった。「言葉が通じないので、基本的にはジェスチャーとか。この試合に入るまででのコミュニケーションはできたんですけど、実際に難しい部分は多々ありました」と呉屋は振り返っており、実際にグループでの守備には課題がある。しかし、それを凌駕する個人能力にひたすら驚かされたばかりである。なでしこ2部にはここまで個人能力に優れた外国人選手というのはパンフレットを見る限り存在しない。つまるところ、こういう”世界規格”の相手との対峙に慣れている選手は少ないだろう。そういう面から見ると、彼女の存在はこれから対戦する敵にとっては厄介なことこの上ないに違いない。ただ、個人的にはこの2部リーグでそういった選手と敵味方関係なく同じピッチでプレーことによって得られる経験値というのは大きいと思うし、ここの影響力は今後の日本女子サッカーを考えると、非常に大きな意味があるように思える。

「大学生ではなくプロ選手ですし、本当に、プロ意識の高い選手。あとはベテランでもあるので、18歳から24歳くらいまでの若手を引き上げるためにすごく効果があるかなと。この子たちもよくやっているのだけど、改めてアメリカからプロ選手を呼んで、”もっとできるんだ”というということを突き詰められるかなと思うし、チームにとってプラスですよね。うちは大学生チームですけど去年は1部でも戦ったので、(リーグの)リーダーとして発信していこうと。そこで新たなチャレンジとしてハドソンと出会えた。彼女の効果は全体を含めてプラス効果があるんじゃないかなと思います」

と太田監督も口にしていた。彼女が吉備国際大学charmeというチームにだけでなく、リーグ全体に好影響を与えてくれることに大きく期待をかけたい。

次に関東で吉備の試合が見られるのは、11月3日(火)の13:00~@味の素フィールド西が丘。インカレを除けば、関東に彼女たちが来るのはおそらくこの日のみ。是非、足を運んできて欲しい。

では、今日はこんなところです。

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